勝利の女神になりたいのッ!~第1部~


流れ落ちる涙を掬い取るようにして落とされた唇。


そのまま彼の唇は私の唇を塞ぐようにして重ねられた。


深い口づけ。


涙の味がしたんだ。



息が出来ないほど長く深い口づけのあと彼はやはり自嘲的に呟いた。



「格好悪いの承知で聞くけど良君って誰?」


「へ?」



急に問いかけられたことと意外な人の名前を聞かれたことでとても間抜けな声を出してしまった。



良君ってあの良君だよね?


それ以外にいないし...。



良君は...良君は....。



「元カレです。」



これで合ってるよね?



付き合ったことのある人のこと、過去の人を元カレって言うんだって雑誌で読んだことがある。


良君って紫衣と付き合ってたんだから元カレ、これで正解だよね?



ニッコリと笑いながら石野さんに自信タップリに応えた。



「マジかよ...。」


大きな溜息を吐き出しながら落胆したような石野さんの言葉と様子に私は戸惑いを隠せなかった。



間違ってる?


何かおかしかったのかな?




「付き合っていた人のことって元カレじゃ間違いなんですか?」


不安になって聞いてみたら石野さんはもう一度溜息を吐き出して小さく合ってるって呟いたんだ。




間違えてないのならどうしてそんなに石野さんは溜息をついているの?


聞きたいけど聞いちゃいけない気がして聞けなかった。













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