勝利の女神になりたいのッ!~第1部~


彼の目の下には睡眠不足を物語るかのようなクマが出来ていて、とても今起きたばかりだとは思えない。


それなのに石野さんは私の質問に答えてはくれずに意地悪な表情を浮かべて口を開いた。


「佐和だろ?」


ずっと、何度も訂正される彼の呼び名。


「佐和さん。眠れましたか?」


ほんの少しウンザリとしながら彼の名を呼び直してもう一度同じ事を訪ねたら彼はフッと小さく息を吐き出すようにして笑った。


「眠れたよ。」


余裕ぶった彼の言葉に何故か誤魔化されているような軽くあしらわれているような気分になって悲しくなった。


涙がこみ上げてきて瞳がウルウルと潤っていく。

どうして嘘をつくんだろう…。

私がいたから眠れなかったんでしょう?

もしかして、とても寝相が悪かったのかも知れない。



気を使ってるのかな?

もしかして何かとんでもない寝言を口にしちゃったとか?






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