勝利の女神になりたいのッ!~第1部~
朝の静けさを感じることが出来たのは彼と一緒に過ごした間だけだった。
朝餉が終わると私は朱里さんと紅葉さんに私室から連れ出された。
「ここで、着替えをしてもらう。」
俺は部屋の前で待つからって襖をピシャリと閉めた紅葉さん。
閉められた襖から視線を部屋に移すと朱里さん含め、4人の女の人が私を取り囲んだ。
着ていた着物を脱がされ、ドラマでしか見たことがないような裾の長い着物に着替えさせられて、髪も普段より丁寧に結い上げられた。
けれど出来上がった姿はドラマに出てくるお姫様と言うよりは、まるであんみつ姫のようで、童顔の自分を恨めしく思った。
「こんなの私には似合わないよ。」
だからポツリと零した呟きに朱里さんはカラカラと笑いながら応えたんだ。
「見慣れてないだけですよ。本当なら殿に一番に見ていただきたいところですが…
紅葉ッッ!!」
私に向いていた顔を襖に向けて声を掛けた。
「ヤダッッ!」
紅葉さんみたいに綺麗な人に見られるなんて恥ずかしい。
襖に背中を向ける私の後ろから陽の光が射し込んでくる。
「馬子にも衣装…。」
ほらね?!
紅葉さんから掛けられた言葉にガックリ肩を落としたんだ。