勝利の女神になりたいのッ!~第1部~
しょんぼりと肩を落とす私の隣に移動して腰をおろす左近さん。
「紫衣、お前が気に病むことはないよ。
可哀想に…。」
肩を抱かれて引き寄せられた。
「殿との約束を破ってまで殿の事を想う気持ちだけで十分なんだ。」
なんだか左近さん芝居がかってませんか?
言葉使いも言い回しも少しいつもと違うよね?
左近さんの様子を伺おうとしても抱かれた肩を押さえつけるように力がかかっていて動けない。
だからチラリと目だけを動かしてみると朱理さんがくすくすと笑っている姿が瞳に映った。
もしかして紅葉さんを説得するために?
あんな風に言われたら紅葉さんも嫌だと言い続けられないよね?
そんなのダメ!
そんな風に紅葉さんを追い詰めちゃ可哀想!
抗議したくて左近さんの腕をぎゅっと握った。
だけど左近さんは全く動じることなく紅葉さんに向かって言葉を投げた。
「お前は誰のために生きている。
お前の忠義は誰のためのものなのだ?」
「やめてッッ!」
左近さんの言葉を否定するかのように叫んだ。
左近さんの言うことは間違ってない、そう思うけど酒席で酒の相手をする事が忠義になるのかな?
紅葉さんは男だもの。
もっと違う形で三成に仕えたいんじゃないの?
叫びながら左近さんの腕を振り払う私の前にはきりりとした表情の紅葉さん。
「阿呆の紫衣、姫らしくない声出すなよ。」
穏やかに、それでも悪い口調は変わらず声を掛けられた。
「別に納得してないわけじゃないさ。
面倒だっただけだよ。
最近女姿になってなかったしな。
長い裾を引きずって歩く着物が鬱陶しく思っただけだ。
それに、紫衣より美人になるのが悪いと思ったんだけど、仕方ないよな。俺の女姿の方が紫衣より美しくてもさ。
元が俺の方が綺麗なんだし?」
つらつらと言い訳とも取れる私への悪態をついていた。
だけど、それも紅葉さんの優しさなんだよね?
それに、言い返せないし…。
本当に紅葉さんの方が綺麗なんだもん。