勝利の女神になりたいのッ!~第1部~
「清正が言ってただろう?」
「………?」
何か言ってたっけ?
彼の胸に頬を寄せる私には胸越しに彼の言葉が耳に入る。
「佐吉は良い嫁を娶ったと言ったであろう?」
その時の状況を思い出して、
「あんなの社交辞令です。」
思ったままに言葉を紡いだ。
だけど私の言葉に三成は大きく息を吐いてから応えたんだ。
「紫衣には聞かせたくない話だが、うたの時も同じ事を言われた。」
「え?」
「清正の賛辞の言葉の後、秀吉様から文が届き謁見に出向いたまま屋敷には戻らなかった。」
思わず起きあがった私の体を離れてはいけないんだとばかりに抱き寄せる三成。
「重くないですか?」
仰向けの三成の上に乗っかるような体制をとる私は気になって仕方なかったことを口にした。
「よいのだ。重くはない。」
だからもう体制は気にせず、三成から聞いた話に集中することにした。
秀吉と謁見してから帰らない妻。
その事実のみを頭で考えた。
「三成様はその経緯をどのようにして知ったのですか?」
「うたからの文が届いた。」
「それだけ?」
「あぁ、それだけだ。」
「秀吉様からは何も?」
「話はした。」
「どのように?」
「…………。」
言葉につまる三成。
主君は絶対的な存在だと忠誠心の強い三成が何をされても逆らうはずはない。
「酷い…。」
思わず口をついて出た言葉に、
「軽蔑したか?」
三成の暗く沈んだ声が掛けられた。