勝利の女神になりたいのッ!~第1部~
だけど彼からは言葉が返ってこない。
不安になった私は彼から体を放して、彼の顔を見るために視線を向けた。
瞳に映ったのは困惑した表情の三成。
「見るな!」
掌で顔を覆って急に起き上がる彼の反動で私は床に倒れ込んだ。
「いたたたた…」
彼の体から転げ落ち床に腰を打ちつけた痛みに顔を歪め、思わず腰をさすった。
「すまない…。」
「酷いよ…。」
謝る彼を睨みつけ言葉を返しすのに彼は、
「そんな潤んだ瞳で睨んでも逆効果だ。」
訳のわからない言葉を返してくる。
本当に痛かったんだから!
それに…
「心配したのに…」
ポツリと漏らす言葉に彼は私を抱き寄せてから耳元に唇を寄せた。
「すまない、本当に悪かった。」
囁くように小さな声だったけど、まだちゃんと話は出来ていないけど、安心出来たんだ。
顔を見せないようにずっと私を腕の中に閉じ込めたまま三成はポツリポツリと話してくれた。
うたさんが秀吉の側室になってもそれ程傷つかなかったことや、秀吉以外の人間を軽んじて見ていたこと、それを周囲も感じて反感を買っていることなどを話してくれた。
「今は違います。
いいえ、あなたはそんな風に振る舞う方が仕事の上で都合がいいと思い、無理していたんでしょう?」
「無理などしていない。
それが俺という人間なんだ。」
「だけど私を放さないって言ってくれたわ。」
「それは…。」
「あなたが感情の薄い人だなんて私は感じたことがないもの。」
「………。」
「それに私を受け入れてくれた。」
「………。」
「それとも私を哀れにおもったの?」
「違う!」
「未来を知る私は利用価値があるから?」
「違う!」
「愛してるわ。」
「俺も…」