勝利の女神になりたいのッ!~第1部~
驚愕する私の表情を見て左近さんは苦笑いを浮かべながら着物を差し出してくれた。
「そのままでは目立ちすぎる。着替えろ。」
受け取った着物を見て、また私は唖然とした。
着物なんて自分で着れないよ!!
受け取った着物を見つめたまま動かない私に左近さんは立ち上がって不思議そうに見下ろしてきた。
「着替えが恥ずかしいのか?俺は外に出ててやるからサッサと着替えを済ませろ。」
家から出ようとする左近さんの着物の裾を掴んだ。
「どうした?紫衣?」
恥ずかしいんじゃない。
そりゃ、左近さんの前で着替えるなんて恥ずかしくないわけじゃない。
だけど着物の着方がわからなくて困ってるんだ。
そうでしょう?
だって私の時代では着物なんて着ないもん。
お正月や特別な日にしか着物なんて着ない。
1人で着れる訳ないよ!!
「着れないんです。」
とても小さな声で私は左近さんに訴えた。
「着れない?」
私の言葉に左近さんは不思議そうに答えた。
「はい、着方が解らない。」
今度は左近さんが驚愕の表情を浮かべた。
「紫衣の時代は何を着ていたのだ?」
「洋服を着ていました。着物はほとんど着ません。だから着付け方が解らないんです。」
「洋服というのは今紫衣が着ている着物のことか?」
「はい、これは制服といって学校に通うために着る服です。」
「なるほど、寂しいものだな自分たちの着ているものを未来のこの国では着ていないのか...。」
寂しそうに呟いてから左近さんは私を立たせ、着物を着付けてくれた。
丁寧に説明を加えながら。