勝利の女神になりたいのッ!~第1部~
馬の速度がゆっくりになりカポカポと蹄の音が響いていた。
本当にカポカポって音がするんだと、どうでもいいことを考えているうちに馬は小さな家の前に止まった。
左近さんに馬から下ろしてもらい、隣に並ぶと左近さんは家の扉をトントンと叩いた。
「島左近だ。話があるここを開けてくれ。」
左近さんの声が響くと同時に開けられた扉。
ギシギシと引っかかるような音を立てながらゆっくりと扉は開いた。
「左近様、なんでございましょう。」
出てきた男の人は深く頭を下げたまま左近さんに話しかけた。
そして顔を上げた瞬間私の顔を見てその男の人は涙を流しながら私を抱きしめた。
「紫衣生きていたんだな。」
「.........?」
紫衣って言った?
生きていたのかって言ったよね?
私を紫衣ちゃんと間違えてるみたい....。
「左近様ありがとうございます。昨日から行方がわからなくなっていた紫衣を連れてきていただいて...。」
そう言って私を抱きしめたまま、その男の人は左近さんに更に深く頭を下げた。
左近さんはその男の人が頭を上げるのを待って話しかけた。
「その紫衣のことだが、少し尋ねたいことがある。家に入れてくれないか?」
左近さんの言葉に男の人は大きく頷き、家の中に左近さんを招きいれた。
私のことは抱き上げたまま...。