勝利の女神になりたいのッ!~第1部~
「失礼します。」
襖を開けて入ってきた人はとても綺麗な女の人だった。
私は慌てて座りなおし着物の裾を整えた。
「そんなに緊張しないで下さい。私は朱里と申します。左近様から紫衣様のお世話をするように命じられました。」
「朱里さん?」
「はい、朱里でございます。左近様からは何も聞いておられないのですか?」
胸の奥がチクリと痛んだ。
「はい、ここで待っていろと言われただけで何も...。」
俯くことしかできない。
なんだか恥ずかしくなった。
左近さんは私に何も話してはくれないのかと責められているような気分になった。
「そんなに肩を落とさないで下さい。左近様が口数が少ないのは今に始まったことではありません。本当にしようのない人です。」
溜息を吐き出しながら話す朱里さんはとても色っぽかった。
艶やかな唇から息が漏れる様子がとても艶めかしい。
「さて、まずは着替えを致しましょう。そのままでは城の下働きと間違えられてしまいます。」
朱里さんはニッコリ微笑んで床に置いてある包みを開けて着物を取り出した。
とても華やかで上質なものだと一目でわかる着物だった。
「わぁ、とっても綺麗...。」
女の子だもの綺麗なものを見るのは嫌いではない、きっと目を輝かせていたのだろう。
朱里さんの笑い声が聞こえてきた。
「これは左近さんがあなた様のために用意された着物ですよ。」
朱里さんは言葉を落としてニッコリと微笑んだ。