勝利の女神になりたいのッ!~第1部~
「あのお方は本当に肝心な事は口に出して下さらない。
左近様は貴女をとても大切に思われていますよ。それは城でも噂になるほどです。」
そう、私は左近さんにとても大切にしてもらっている。
二人で暮らした半年、左近さんは私の側を片時も離れずに色々教えてくれた。
とても大切であたたかい時間だった。
独りぼっちの私を寂しがらせないように抱きしめてくれて安心させてくれたのも左近さん。
だから、左近さんの重荷になっているような気がしてつらいときもあったんだ。
「私が頼りないばかりに左近さんの重荷になってるんじゃないかって…」
言いたいことを最後まで続けられなかった。
朱理さんが私の言葉を聞いてまたコロコロと声を上げて笑ったからだ。
「今、左近様は殿にタップリお小言を頂いてるはずですよ。
半年の間城に戻れとの殿のお言葉に逆らい続け、やっと今日戻ったのですから…。
殿の為に生きてきた左近様には考えられない行動です。
それは全て紫衣様の為。左近様は何よりも紫衣様の事を優先されたのです。
それほどに貴女様は左近様に愛されていらっしゃる。
少し妬けてしまいますね。」
私をチラリと横目で見て朱理さんは話を終えた。
朱理さんの話を聞いて私は左近さんも私と同じように二人であたためあった時間を大切に感じてくれていたのだと胸に灯りが灯るように明るくなった。