勝利の女神になりたいのッ!~第1部~
「左近、すぐにその娘に逢う。」
返事とともに俺は立ち上がった。
襖を開け放ち廊下を足早に歩く俺の後ろから左近は俺の手を引いて俺の動きを静止した。
「お待ち下さい。まだ話は終わってはおりません。」
「俺は確かめたいことがあるのだ。すぐに案内いたせ。」
「なりません。私の話を最後までお聞きいただかなければ逢わせる訳にはいきません。」
左近の様子があまりに真剣で俺は左近の言うとおり部屋に戻って話を聞くことにした。
俺の手首を掴む左近の手の力が強く手首に赤く痕が残るほど左近は俺の行動を止めたかったのだ。
「痛いぞ左近。」
俺は左近にわざと見えるように手首に残る指の痕を擦りながら話しかけた。
「殿が私の言うことを聞いてくれないからでございます。」
むっとした表情で俺に言葉を返してくる左近。
家臣としては不出来な行いだが俺はそんな左近だから側においている。
従順なだけの家臣ならば左近を俺の片腕にはしていない。
俺は左近を心から信頼している。
だからこそ左近が必死に止めてまで聞かせたい話を聞いてみたくなったのだ。