勝利の女神になりたいのッ!~第1部~
石田三成。
天下に一番近い人物、秀吉様の家臣。
そんな人がどうして?
「紫衣の生きる時代では俺はまだ死んでいない。今ここにいる俺は己の生涯を終えた俺だ。」
お兄ちゃんの言葉は私には難しすぎて解らなかった。
首を傾げる私にお兄ちゃんは微笑みを浮かべながら話してくれた。
「よい。
紫衣には解らなくても、俺の話をただ聞いて欲しいのだ。」
頭を大きな手で撫でてからお兄ちゃんは隣に少し距離をおいて座っている紫衣の肩に腕を回して抱き寄せた。
「俺は俺の思うように生きた。
ただ、俺の思うとおり周りが動かなかったのだ。それも己の力不足だとは解っている。
だが、俺の失敗は大きすぎたのだ。
世を変えてしまう失敗を俺が招いてしまったことを死んでも尚悔いる気持ちがなくならない。
もう一度やり直せたなら…。
その思いが強すぎてアチコチさまよい歩いて、ここにたどり着いた。」