勝利の女神になりたいのッ!~第1部~
差し出された水瓶に触れてみた。
「のぞいてみろ。」
なんの変哲もない水瓶。
私は首を傾げながらも言われたとおりに水瓶を覗いてみたんだ。
「何が見える?」
問われたけれどただ水がゆらゆらと揺れているだけ。
揺れる水面に私の滲んだ顔が映り込んでいた。
「私が映っているよ?」
私の言葉にお兄ちゃんはちょっぴり肩を落として微笑んだ。
「そうか…。何も見えぬなら見えぬ方がよいのであろう。
紫衣は幸せだったのだな。」
少し寂しそうな表情を浮かべたお兄ちゃんは大きな掌で私の頭をグリグリと撫でてから水瓶を又自分の方に置き直した。
そして私の両肩に手を乗せて私と向かい合うと正面から私の顔をのぞき込むようにして目を合わせた。