平安物語=短編集=【完】



院は、目を見開いて私を凝視なさいます。

私は緊張と恥ずかしさで震える手を動かし、袖で顔を隠しました。

しかしその腕を掴まれ、「宮。」と呼ばれます。

恐る恐る院を見ると、院はいかにも真剣なお顔をなさっていました。

五十代半ばの院はますます男らしくおなりになって、憂いをたたえたそのお目に、私は今でも胸が高鳴るのです。





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