平安物語=短編集=【完】
「今仰ったことは、本当ですか…?」
しばらくの沈黙の後に俯いて頷くと、ぎゅっと抱き締められました。
「院…?」
「私は…あなたには、嫌われきっているものだと思っていました。
心ならずも親の命令で私に入内したことを恨んでいるのだろうと…。
まさかあなたが。
そうと分かっていたら…。
私は今まで、あなたにさぞかし辛い思いをさせてきたのでしょうね。
本当に…。」
院の肩が震えているのに気付いて、私の頬を涙が伝いました。
それは、幾度と無く流した悲しみの涙ではなく、喜びの涙でした。