平安物語=短編集=【完】



そして院はやっと立ち上がり、何度も何度も振り返りながらお帰りになります。

私は辛い体を女房に支えてもらって、見えなくなるまで院を見送りました。


そうして再び御帳台に横になるやいなや、抗い難い眠気のようなものが襲ってきました。


――さようなら、あなた…。

どうか、お幸せに。





異変に気付いた女房が騒ぎ立てるのを遠くに聞きながら、私はそっと、幸せな気持ちで瞼を閉じました。





― 藤壺中宮 ―
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