平安物語=短編集=【完】
母上は心労で儚く亡くなり……
父上も、私の裳着を待たずして亡くなってしまいました。
未亡人となった義母上は不本意にも、強引に言い寄ってきた少将と再婚しました。
そんな大人達を見知ってきながら、どうして結婚などしようと思えましょう。
「姫様も、もう十六歳でいらっしゃるのに…本来なら華々しく入内し、帝にお仕えなさる筈の御身…。」
乳母は心底父上の逝去を悼み、その分少将を疎んでいます。
しかし…私は知っています。
この乳母だって亡き父上の愛人の一人であったことを…。