平安物語=短編集=【完】
少将は、自分より身分の高い中将様をこの上なく歓待します。
女房達もそちらへ出払ってしまい、退屈なので、一人で物語など眺めたりしていました。
夜も更け、ついうとうととしていた時、トントンと御格子を叩く音がしました。
女房か誰かが中へ入りたいのだろうと思い、端近へ行って「誰?」と問うと、
「長の月日お慕いしてきた甲斐がありまして、お側に参れました。
しかしここでは雨に濡れてしまいます。
情けをおかけ下さって、どうか中へ入れてくださいませんか。
あなた様を想う気持ちを申し上げたいのです。」
と言う、若い男の声がするではありませんか。