平安物語=短編集=【完】
牛車をつけてある所へ着き、姫の手を取って乗せる。
「私はここまでです。」
そう言うと、姫は私の手をぎゅっと握った。
「東宮様はお優しい方です。
何の心配も要りません。
それでも何か辛い事があったら、ここへ里帰りして来なさい。
でも、軽々しい行動は慎しむのですよ。
あくまで穏やかに、波風立てず…」
つい心配で長々しい説教をしてしまうのを、姫は頷きながら聞いていた。
メニュー