平安物語=短編集=【完】
疲れて眠ってしまった私は、子猫がすり寄って来る夢を見ました。
『まあ可愛い。』
そっと抱き上げて胸に抱くと、丸くなってちょこんと収まり、にゃあと可愛らしく鳴きました。
顎の下を撫でているうちに夢から覚めて、何だったのだろうと思いながら隣の義道様の方を向くと、義道様もぼうっと天井を見つめていました。
「義道様?」
心配になって名前を呼ぶと、やっとこちらを向いて
「子猫の夢を見ました。」
と仰るので私の見た夢をお話しすると、何とまるで同じ夢なのです。
不吉な夢でなければ良いがと不安が胸をよぎりましたが、つとめて気にしないようにしました。