平安物語=短編集=【完】
「静姫、静姫、……ああ、本当なんですの?
義道様、本当に私達…」
震え声で呟くと、義道様はにっこりしたまま大きく頷かれました。
「やはり私達は、前世からの深い因縁のもとにあったのですね。
こんな幸せは初めてです。」
一筋の綺麗な涙を零して微笑む義道様に、私から軽く口づけし、義道様の胸にすがりました。
お腹に手を当ててみても、まだ何の変化もありません。
――でもここに、確かに静姫がいるのだわ…
深い感慨に私も涙を零すと、義道様が優しく抱き締めてくださって、我が身を預けました。
――尼になってしまわなくて、本当に良かった……
― 春雨の上 ―