平安物語=短編集=【完】



「どうか、私も連れて行ってくださいませんか?」

と懇願すると、藤壺は静かに首を振って

「お心は本当に有り難く、嬉しく存じ上げます。

しかしながら、あなた様。

大切な、若い私の姪の君をお忘れでいらっしゃいますか?

登華殿女御は、今、姫御子を授かっていらっしゃいます。

もう五ヶ月になるのに、あなた様に遠慮して伝えられないでいらっしゃるのです。

どうか、その姫御子を私の生まれ変わりと思し召して、お心強く生きてくださいませ。」

と言った。



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