平安物語=短編集=【完】
登華殿女御の懐妊が公になると、
「亡き皇太后様が、登華殿女御様と腹の御子を呪い殺すのでは…」
などというふざけた噂が広まった。
不愉快千万で、なんとかして天誅を下してやりたいと思っていた矢先、私より先に尚仁が動いた。
仕事を終えて退出しようとしていた若い貴族二人がその話を面白おかしくしているのを聞いた尚仁が激怒し、蟄居を命じ、流罪にしようとしているとの話だった。
尚仁は、亡き母の代わりにと藤壺を慕っていたから…
私の代わりに尚仁が怒りを露わにしたことでかえって私は冷静になり、尚仁のことを案じた。
私だって、流罪にしたいくらい腹立たしく思うけれど、今回の件で流罪とは少し重すぎる。
今まで賢帝と名高かった尚仁の名に、傷がつくのでは…