平安物語=短編集=【完】
姫との対面を果たした時には、私にも女御にも似ていない気品高い美しさに圧倒された。
これは…まさか本当に…?
恐る恐る抱くと、無邪気な笑顔を向けてくれる。
しかしその面差しは藤壺に似ている訳ではなく、女房達は
「お二人の良いところをお取り合わせになったような姫宮ですこと。」
と言っている。
それでも私は、藤壺のような素晴らしい女人になるようにとの願いを込めて、
「…綾子。
綾子と名付けよう。
私の知る、最も美しい方の御名だよ
絶対に幸せにしてあげるから…」
姫は、無心ににっこりと微笑んだ。
― 朱雀院 ―