平安物語=短編集=【完】
ある日を境に、殿は内裏にお泊まりになる日が多くなられました。
どなたか他にお心にかなう女房を見つけられたのだろうと、少ししんみりしておりましたが、とにかく、まさかお妃様のどなたかと恋仲になんてなっていらっしゃらないだろうかと心配でした。
とりわけ、弘徽殿女御さま…
殿は、弘徽殿女御さまのお噂となると、さり気なくも細々と聞き出そうとなさるのです。
他の人々は誰も気づいていませんが、私には分かります。
殿はきっと、弘徽殿女御さまに道ならぬ恋心を抱いていらっしゃったのでしょうね…