平安物語=短編集=【完】
しかしその想いは堪えなさったようで、ある日、弘徽殿女御さまにお仕えしていらした御方様…当時の弁の君を、お屋敷に招かれました。
私たちには、
「弘徽殿女御さまにお仕えしている弁の君という方を招いたのだが、大切な方だから丁重にお扱いするように。
ゆくゆくは北の方にお迎えするかもしれない方だから、今から親しくお仕えすると良い。」
と仰いました。
私は、他の女房たちと同様に不愉快でした。
いくら弘徽殿女御さまの所とは言え、女房は女房。
うちの殿とは身分が違いすぎる。
そんな方に、北の方としてお仕えするなんて…
そう思ったのです。