平安物語=短編集=【完】
関係ない私たちでさえ、あまりのおめでたさに舞い上がって大はしゃぎしておりました。
殿も、お見舞いにいらしていたようでした。
殿の姉君が右大臣様の北の方でいらっしゃるため、親戚付き合いをなさっているのです。
しばらくして、御方様がお支度を整えるためにお帰りになりました。
たいそうお泣きになったのでしょう、お化粧がすっかり涙で流れてしまっていらっしゃいましたが、素顔こそお可愛らしいお方なのでかえって好ましい感じがします。
「聞いたでしょう?
玉のような男宮でした…
本当に、おめでたくて。」
なおも感涙をこらえられない御方様は、お支度もままなりません。
それでも、女御さまがお目を覚まされる前に戻らなくてはと何とか気合いを入れて、お化粧もお召し物も綺麗に整えることができました。