平安物語=短編集=【完】



また帝が、左大臣様に杯を下されました。

「本当に晴れがましい息子をお持ちですね。」

と帝が仰いますと、二の宮がそれに反応されて

「宮も宮も、左大臣の息子です。
宮のことも可愛いと思っていらっしゃるのでしょう?」

と左大臣様に食ってかかられました。

左大臣様はたじろいだような御様子でしたが、帝が高々とお笑いになって

「いつも住んでいるお里にはしょっちゅう大臣がいらっしゃるからと言って、そんなことを言うものではありませんよ。
あなたは私の子でしょう。
左大臣はきっと、宮も息子のように可愛いと仰ったのでしょう?」

と仰いました。

左大臣様も珍しく声をあげてお笑いになって、

「ええ、二の宮も本当に可愛いと思い申し上げておりますよ。
息子のように心を込めてお世話させて頂きましょう。」

と、二の宮にお答えになりました。

二の宮は何だか不服そうな御様子でしたが、左大臣様のお膝に乗せていただかれると、急に御機嫌が良くおなりでした。



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