平安物語=短編集=【完】



そうして数年が経った頃、太政大臣の御長男の大納言様を、弟が家に連れて参りました。

ほんの少ないお供を連れて忍び歩きをなさっていたところ、急に空が荒れだしたからです。


大納言様は、私をご所望なさいました。

この際生涯処女を貫こうと思っていた私でしたが、弟が本当に困りきった顔で頼むので、弟の顔を立てる為に…受け入れたのです。

大納言様は早くも御正妻を迎えていらっしゃいましたから、私はほんの慰みに過ぎません。

あの時ほど、拙い我が運命を憎んだことはありませんでした。



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