平安物語=短編集=【完】
甘い疲れに浸りながら、殿の寝顔を盗み見ます。
こんな作り物のように綺麗なお顔をなさって、なんて冷たい非情なお心でしょう。
殿の事を思い切れるかもしれないという時になって、こんな風に気まぐれにおいでになって。
私に愛欲の辛さを思い知らせることで、日頃の憂さを晴らしてでもいらっしゃるのでしょうか。
辛くて苦しくて憎くて、…愛しくて。
離れたいのに離れられない、離れたくない。
この苦しみは、一方が死ぬまで続くのでしょうか。