平安物語=短編集=【完】



「一体、どういうお心の変化なのでしょう。」

殿がいらっしゃるやいなやそう問いかけると、珍しくクックッとお笑いになります。


「心変わりとは、ご自分のことですか?
昨日久しぶりにお訪ねいたしましたら何やら雰囲気が変わっていらっしゃるので、つい惹き付けられてしまうのですよ。
一体何があったのですか。」

「まあ、あなた様のお屋敷から一歩も出ない私に、どういう出逢いがあると仰るのでしょう。」

ふいと顔を背けて答えますと、くいっと顎をつかまれました。


「そんなことを仰っても無駄ですよ。
かの有名な頭中将と、言葉を交わされたのでしょう?」

「え…」



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