平安物語=短編集=【完】



そうした事情を、どうして殿がご存知なのでしょう。

おしゃべりな女房が話してしまったのでしょうか。


顎をつかまれたまま困りきっていると、ちゅっと唇が落とされました。

「その後頭中将は私の所にやって来たのですよ。
そしたら頭中将が、東の対で、奥ゆかしく並々の者とは思えない女房と話したと自慢げに話してくれましてね。
さり気なく詳しく聞いて見ると、どうにもあなたのようなので。」

そう仰って、私の目をじっと見つめます。


「思いがけずお声をかけて頂きまして、不審に思われないよう女房に扮してお答えいたしました。」

そう控え目に言い訳すると、目を細めて口元だけでお笑いになります。

そのまま組み敷かれてしまいました。



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