平安物語=短編集=【完】



書き終えるや否や、胸が急に苦しくなってその場にうつ伏してしまいました。

女房達が慌てて寄って来てあれこれ介抱してくれますが、もうこれが最期でしょう。

中には激しく涙を流す者もいます。

かわいい犬君は、私の側に座って茫然としています。


意識が朦朧としてきた時、何もご存知ない殿が、おくるみにくるまれた若君を大切そうに抱いてお越しになったのが見えました。


ああ、私の息子…


誰かが何か叫ぶのを聞きながら、意識を手放しました。



どうか、少しでも私を哀れとお思いくださるのなら、その若君を可愛がってくださいませ。

出来るなら北のお方の養子に…

目障りな私に優しくしてくださったそのお心で、どうかその若君も慈しんでくださいませ…





― 東の御方 ―
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