平安物語=短編集=【完】
大好きだった姉上が、ひと月ほど前に亡くなりました。
私はもう悲しくて、出家でもしてしまわなくては心を病んでしまいそうだったのです。
帝のお許しも得ず自らの手で髪を切り落としてしまったことは、世間の非難も受けるでしょう。
まだ成人前の十四歳の姫も、見捨てられたと思うでしょうか。
知らせを受けて駆けつけた父上の、唖然とした表情も忘れられません。
母上が激しくお泣きになるのを見るのも、初めてでした。
姉上のご逝去に加えて、何という親不孝かと自分でも思います。
それでも…ずっと出家したい気持ちを宥めていてくださった姉上を失って、もうどうしようもなかったのです。