平安物語=短編集=【完】
その翌年の、如月のことでした。
三カ月ほど、月のものが来ておりませんでした。
何となく気分も優れず、匂いに敏感になってしまいます。
女房達の誰もが身ごもったかと大喜びしておりましたが、私は頑として、東宮様にお知らせすることを拒みました。
勿論、私は嬉しゅうございました。
愛しいあなた様の御子を授かったのですもの。
でも、あなた様はいかがでしょう?
誰より大切な女御様に先立って私が懐妊などしたら、あなた様は残念にお思いになるのではありませんか?
そんなお顔色を見取ってしまうのが、この上なく恐ろしかったのです。