平安物語=短編集=【完】
それから五日間続けて、東宮様は私をお召しくださいました。
懐妊という、東宮様には想像もつかないような状態の私ですから、まるで死にそうな病人であるかのように扱ってくださいます。
そんな東宮様に、私は
「東宮様は、男御子と女御子、どちらをお望みですか?」
とお尋ねしました。
東宮様を試したのです。
すると東宮様は「うーん」と悩んだ後、
「無事に元気で生まれて来てくれれば、どちらでも嬉しいですね。」
と、輝くような笑顔で仰いました。
このお方は、本当に真っ直ぐで正直に生きていらっしゃる。
深窓で育ったはずの私より、世間の闇に汚れることなく、美しいお心なのだわ。
試すような真似をした自分が恥ずかしくて、「私もです。」としかお返事出来ませんでした。