平安物語=短編集=【完】
「中君。」
「お姉様…!」
姉上が、私の部屋にいらっしゃいました。
「お久しぶりです。
ご懐妊、おめでとう。」
「ありがとうございます。
お会いしとうございました…」
姉上は、私の顔をみてちょっと頭をかしげます。
「宮仕えが、お辛いの?」
「え…」
「あなたの顔を見れば分かります。
可哀想に、尚侍なんておかしな身分ですものね。
あなたなら当然女御になれる筈なのにね…」
そう仰って少し涙ぐまれるのは、御自分を責めていらっしゃるのでしょう。
私が尚侍になると聞いた時、姉上はひどく取り乱して「私の身分も更衣に落として良いから、中君をせめて更衣に…」と父上に縋ってくださっていました。