平安物語=短編集=【完】
「あなたは本当に、あまり物事を深く考え過ぎるのだわ。
それがあなたの良いところでもあるのだけれど…
世の中には、そんなに何も考えなくても上手くやっていける姫君なんていっぱいいるでしょうにね。
ましてや私達の父上は左大臣なんですもの、何の物思いもせずにのんびりとしていても良さそうなものです。」
いかにも気の毒そうに仰るので、我ながら本当に情けない性格だと思ってしまいます。
「でも、あのおっとりとした母上だって、何もお考えでない訳ではないのでしょうね。
東の対の御方とは、本当に素晴らしいお付き合いをなさっているようだけれど…」
「東の御方も、お気の毒な方ですもの。
父上の都合に振り回されて…」
ほうと溜め息をついたり笑ったりしながら話しているうちに夜も更けてしまい、その日は姉上と一緒こ御帳台で休みました。