平安物語=短編集=【完】
「まあ綺麗…」
「お母君の御生前はよく参りましたが、確かにもうここ何年も遠のいておりましたからね。
姫様はあまり覚えていらっしゃらないでしょう。」
牛車を、眼前に紅葉が広がっている、少し開けた所にとめました。
ひと気が無いのを確認して、するすると御簾を上げます。
「我が家の紅葉の木も十分美しいと思っていたけれど、迫力が違うわね。」
「はい、本当に。」
そのまま、幻想的な眺めに魅入っておりました。
***