平安物語=短編集=【完】
その者が去って行った時、遣いが来た。
「どこそこの女君からでございます。」
鷹狩に興じていると知っていながら手紙を寄越すとは、気の利かぬ女だ。
「要らん。邪魔だ。」
その遣いは困って焦っていたが、たった今その女への気持ちは冷めた。
元々、あちらから声をかけてきて関係を持ったのだ。
他にも、適当に気持ちを慰める女は何人かいるから、そういうつまらない女は必要無い。
女なんて、ちょっと気のある素振りを見せればあっという間に靡いて来る。
所詮私が親王だという肩書きに惹かれているのだ。