平安物語=短編集=【完】



案内された所で、垣のようになっている植物の所に潜んだ。

葉と葉の間から向こうを覗くと言った通り三台の車がとまっていて、五人の女房と六人の女童が車から降りて、嬉しそうに紅葉を眺めていた。


「姫様も、お降りになってはいかがですか?
人目もありませんし、紅葉を間近でご覧になれますよ。」

一番立派な車の中にいるらしい姫君に女房が話しかけて、しばらくやり取りがあった後、ゆっくりと扇を顔に掲げて降りて来た。


背が低く、着物の裾が非常に長い。

しかし髪が驚く程美しく長くて、その長い裾に余る程だ。

ゆっくりと紅葉の木に近寄って見上げるが、背が低いから真上を見ている様子がとても可愛らしい。



< 562 / 757 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop