平安物語=短編集=【完】
***



「只今戻りました。」

姫君達の跡を追わせた者が帰って来た。


「どうであった?」

「はい。
やはり、かつて関係があった女房でした。
その者に話を訊いたのですが、何せ思慮の足らない浅はかな女でして、私が姫君に想いを寄せていると思って嫉妬し、姫君の事については何も教えてもらえませんでした。」

「ふうん…でも屋敷は分かったのか。」

「いえ、お屋敷と申しますか、紅葉狩のための別荘のようです。
…ご案内いたしますか?」

最後の言葉は、ニヤッと笑いながら言った。


「では、頼もうか。」



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