平安物語=短編集=【完】



「ん…」

花びらのような唇から漏れた声だけで、どきんと胸が高鳴る。


「え…誰…?」

「あなたをずっと前からお慕いしていた者です。
念願叶って、今夜こうしてお側に参ることが出来ました。」

口から出任せを言うが、姫君は疑うなんて事も知らず頬を染める。


「まあ、こんな…恥ずかしい…」

おっとりとしていて、特に抵抗をするでもない。

そんな様子が、本当に愛しく思われた。



< 569 / 757 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop