平安物語=短編集=【完】



結局その晩は、あまりにウブで無垢な姫君に手をつけられなかった。

それでも、何も分からない姫君に

「こうして私達が結ばれたのも、全て運命なのですよ。
これからは、あなたも私を愛しいと思ってくださいね。」

と言うと、共寝以上の男女の関係があるなんて思いも寄らない姫君は、頬を染めてちょっと頷いた。

ますます可愛くて仕方ないが、もう出て行かないと、人目について騒がれるのも厄介だ。

右近も待っているだろう。


「明日も必ず参りますから、待っていてくださいね。」

そう言って、後ろ髪引かれながらも去った。



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