平安物語=短編集=【完】



「この…女狐!!」

そう叫びながら、そこにあった着物を投げつけられました。

「さすがはあの女の娘よ!
母娘揃って人の男を奪いおって。
虫も殺さぬような顔して、おぞましい!!!」

「おやめください!」

「何をなさいます!」

慌てて女房達が庇ってくれますが、北の方の悋気は収まりません。


「男に抱かれて、ほくそ笑んでいたのであろう。
中の君に勝ったと!
ええい、憎たらしい。
愛人の子の分際で中の君に恥をかかすなど!!」

迫って来た北の方に素手で叩かれて、恐ろしさに涙が出ました。

必死で引き離そうとする侍従の陰で、ただ震えていました。



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