平安物語=短編集=【完】
***



無理を言って、大君との急な対談が許された。

私の身分に気を遣ってくれて、御簾の中に通された。


新婚の婿殿が、さぞややきもきすることだろう。

そんな事を考えながら、しつらえられた席に座った。

全体的に、品良く小綺麗な装飾だ。

北の方の所の、豪華で派手な感じとは正反対だった。


「急にお訪ねしまして、申し訳ございません。
快くお迎え頂けまして恐縮でございます。」

「義理の妹のお婿様を、どうしてお迎えしない訳がありましょう。
ただ、満足なおもてなしも出来ませんでお恥ずかしい限りでございます。」

おっとりと、物静かな声がした。

既婚とは言えまだ若い姫君なのに、紅葉の君の保護者のような立場をとって自ら話すのだろう。



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