平安物語=短編集=【完】
***
「では、これにて。」
「……。
娘をお願い致します。」
辛そうに目を伏せたままの父宮。
気分が悪いと、見送りもしない北の方。
当てつけがましく、部屋で催し事をしている中の君。
大君だけが、紅葉の君の門出に相応しくあれこれ整えていた。
――早く、こんな所から紅葉の君を連れ出したい。
無理に笑顔を作って、裾を翻して紅葉の君を乗せた車の方に歩いた。
「では、これにて。」
「……。
娘をお願い致します。」
辛そうに目を伏せたままの父宮。
気分が悪いと、見送りもしない北の方。
当てつけがましく、部屋で催し事をしている中の君。
大君だけが、紅葉の君の門出に相応しくあれこれ整えていた。
――早く、こんな所から紅葉の君を連れ出したい。
無理に笑顔を作って、裾を翻して紅葉の君を乗せた車の方に歩いた。