平安物語=短編集=【完】



若宮も無事成人され、女二の宮を正妻に迎えて御立場もしっかりしたところで、宮様はいよいよ出家を果たそうとお考えになりました。

様々なごたごたも収まって殿に打ち明けようかという時、

「許して欲しい…
私には神仏に許しを乞わなくてはならない大罪がある。
幼い人々の身の振りようもそれぞれ決まった今、出家をして入山し、この命果てる時まで仏に仕えようと思う。」

と、殿に打ち明けられてしまったのでした。


「私こそ…ずっと出家を考えておりましたのよ…」

ぐっと唇を噛んで涙を堪える宮様は、やはり殿への愛情を捨て切れてはいなかったのです。

「長年共に過ごしてきた私を哀れと思うなら、どうか見送ってはくれないか…」

「ずるい…本当にずるい…」

身をよじって嘆く宮様の御心の内には、どれ程の想いがひしめいているのでしょう。

まさか宮様が殿を見送ることになってしまうなんて…




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