平安物語=短編集=【完】
しかし所詮どうしようも無かった。
一度も返事をもらえないまま、今日姫君は入内する。
弘徽殿女御となるのだ。
胸を掻き毟るほど辛いのに、政の世界に生きる私は姫君の行列に馬に乗って従ったのだった。
姫君の乗る牛車に視線を注ぐ余り、何度も列を乱しそうになった。
ここから、姫君を掻っ攫って行けたら良いのに。
私が、あの美しい女を幸せにしたい。
どうして…
どうして私は何も出来ないのだろう。
結局、内裏まで送ってしまった。