平安物語=短編集=【完】
大臣の愛情を感じれば感じる程、私にも自信がついてくるのです。
そして自信がついてくると、亡くなった北の方や御一人娘の女御様、他の関係のある女君達の事など、色々教えて欲しいと思い始めてしまいます。
でも、身分違いの私などがそのような事…愚かしい事です。
そう思っていたのに、ある日大臣は、
「あなたも、うちの女御の事はご存知でしょう。
我が娘ながら出来た女人なのですが、なかなか御子を授かれなくて…
綺麗事と思われるかもしれませんが、私はあの子を政の道具にする気は無いのです。
でも孫は見たいし、あの子にも我が子を抱く喜びを知って欲しい。
あの子の母親があの子を抱いた時、それはそれは…」
言葉を切ってお涙を押し拭ってから、
「美しい、幸せそうな顔をしたものでした…」
そう、おっしゃいました。
お気の毒に思うより強く、お気持ちを打ち明けてくださった事を嬉しく思う私は、酷い女でしょうか…。